8月8日(金)

 朝には雨が止んでいた。みんな荷物をまとめて出発し始めた。そして出ていく前に写真を撮りあって別れた。俺一人が、今日一日宗谷岬に行くだけなのでとどまる。

 そしてテントはそのままにして、バックパックに適当に荷物を入れて出発する。本当は手ぶらでもいいのだが、ヒッチしやすくするため見せかけ用にバックパックはあった方がいい。

 1時間程歩き続けるとようやく郊外に出ることができた。そして道端で腰掛けて指を立てる。10分程待っていたが止まってくれないのでまた歩きだした。今度は立ってヒッチハイクしていると一台のセダンのおっちゃんが止まった。そして宗谷岬まで5kmの所で山の方へ曲がり、山を登り始める。俺は不安になった。本当ならまっすぐが宗谷岬なはず・・・


まさに酪農地帯

 そして車は牧場の中の道をどんどん進み、さらに砂利道に入る。(ゲゲッ!このおっちゃんどこに連れ込む気や)しかしおっちやんは、「間違ったわ」と言い車をバックして元の舗装路に戻った。とてもあせった。そしてしばらく進み、大岬へ3kmの看板の所で降ろしてもらった。


真ん中の尖っているのがモニュメントだ

 そして牧場の中を走る道を歩き続ける。黒い肉用牛がにらんでくる。大きな風車の建物が見えてきてその近くに平和を願う鶴の形をしたモニュメントが置かれている。そこから下を見下ろすとめざす宗谷岬が見えた。「ようやくここまでこれたんだ」

 丘から降りて岬の先端まで行った。三角錐の形をしたモニュメントで記念撮影をしたとき、アメリカの最南端「サザンモストポイント」の事を思い出した。こっちの方が遙かにきれいに整備されてるよな。あっちはみょーなおっさんが写真を撮ってあげた代わりに「チップよこせ」なんていってな。そして俺は10セント(約10円)あげたっけ。

 近くの土産物屋にここに流れ着いた流氷を無料で展示してある。展示室の中はマイナス15度以下だ。残り少ないお金でかわいいキタキツネのキーホルダーを買った。

 帰り道、観光客から見えないところまで歩いてヒッチハイクを開始した。5分も立たないうちに黒いスモークフィルムを張ったセルシオが目の前に止まった。怖いなぁと思いつつドライバーを見るとちょっと怖そうだがやばそうではなさそうなおっちゃんだった。

 「こんな所までヒッチハイクでやってきたのか?」「はい、はるばる愛媛からずっと陸路を通って」「そうかぁ北海道までよくきたもんだ。根性あるなぁ。北海道でいいもんくったか?」「いえ、まだです。最小限しかお金持ってきていませんし」「おまえ今日飯食ってねえのか?」「はい、バナナ食べました。」「・・・・・」「せっかく稚内まで来たんだから、蟹でも食べて田舎に帰ります。」「そだな、せっかく来たんだから蟹を食っとかんとな。」そしてしばらくあとに、「よし、おれが蟹食わしてやる。」と、稚内にあるかに市場で4杯も毛がにの載った5千円もするものを土産だと買ってくれた。俺はもう感動して、何度も礼を言って別れた。


目が怪しいぞおいっ

 テントに帰ると我慢しきれずに一杯食ベた。こんなうまい蟹は食べた事がない。感激して写真も何枚か撮る程だ。あと、近くにいたキャンパーに「蟹もらったから食べに来てください」と人を集めてみんなに分けあった。「いいことしてもらったんだから、おれもいいことしなきゃな」ただし、田舎には蟹を送らなかった。ま、日が経つとまずくなるし、送料の方が高く付くからな。

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